秀808の平凡日誌

第17話 前夜

第17話 前夜


 旧レッドアイ研究所 B4

 『REDSTONE』の安置されているエリアで、ファントムと

 すでに天上界に帰ったはずである天使…メキジェウスが話していた。

 メキジェウスの後ろには、なにやら巨大な機械が設置されている。

「…これが、例の物だ。ファントム」

「…なんだ?これは…」

「…順序を追って説明してやる。『エリプトの悲劇』は知っているな?あのエリプト帝国のバカ供が、悪魔達を眠りから起こし、帝国ごと滅び去った事件だ。」

「その『エリプトの悲劇』とこの機械に、何の関係が?」

「まぁ、聞け。その後エリプトを滅ぼした悪魔達は、いくらかは数が減ったものの、まだ何千何万という数がいた。そして、手当たり次第に近くの町や村々を襲い始めた。」

「…メキジェウス、私は長ったらしい説明は好まない。率直に言ってくれないか?」

「…では聞く。エリプトを滅ぼした悪魔達は真っ先に、古都ブルンネンシュティグを狙い、普通ならとっくに滅びている。だが、今も古都の文献には滅びたとは記載がされてないのはなぜだと思う?」

「…まさか…」

「…そうだ、『REDSTONE』の探索を仮にとはいえ、手伝ってもらっている人間達をこの悪魔達によって滅ぼされるのは非常にまずいと天上界の大天使達が判断した。そして、わざわざ天上界では禁止されている攻撃兵器を使い、悪魔達の大多数を死滅させた。」

「その機械が…そうだというのか?」

 メキジェウスは首をコクリと縦に振った。

「この機械は…私が生まれる大昔前に起きた、天使達と悪魔達の戦争で使われた…とされているが、それはよく私もしらない。」

「…破壊力や、動力源は?」

「古い記録によれば、破壊力は全体のエネルギーの50%で、タトバ山がまるごと吹き飛ぶほどの破壊力だそうだ。」

「!…すさまじいな…」

「さらに、動力源には『REDSTONE』に秘められている火の魔力を必要とする。それさえあれば、後は勝手に発射準備をしてくれるらしい。ちなみにエリプトの悪魔達を死滅させた時は、フェニックスに火の元素を大量にわけてもらい、使用したらしい。」

「…その兵器には、名前はあるのか?」

「グングニール…『神のいかずち』という意味の名がつけられているが…」

「…どうした?」

「時折思う。これを作った我々天使は、神に値すべき存在なのか?『REDSTONE』を探すなら、天使総動員で地上に降りて探せばいいはずだ。それなのに、地上の人間達に不死になるだのとデマを流し、自分達は天から見ているだけとは…疑問を感じずにはいられない。」

「だが、メキジェウス。地上の人間にも、神と呼べるような存在はいない。今のブルン王だってそうだ。皆、自分の至福、欲望のためだけに生きているような連中ばかりだ。昔、そんな連中に従ってまで、ロシベルを倒した…だがフロストが死に…つらい思いをしながら古都に帰り、王に報告した…しかし、奴は「『REDSTONE』を渡すのがが先だ!」などといい、フロストが死んだことなど気にもかけなかった!そんな人間が今世界を統一しているということが、私には許せないのだ!」

「…なるほど、ファントム。お前がこの『グングニール』を用意させた意味が今わかった…『REDSTONE』を使って、古都ブルンネンシュティグを丸ごと吹き飛ばす気なのだな?関係のない大多数の命を巻き込んでまで。」

「…フン、あのような人間に従うやつらなど…皆滅びればいい。」

 2人が話していると、近くのワープポータルが開き、レッドアイ警備兵が入ってきた

「大変です。何者かが数人、この研究所に侵入した模様です。いかがなさいますか」

「ふむ…」

 ファントムは。ニヤリと笑うと、警備兵とメキジェウスに、言った。

「お前はレクル、キャロル、あとはあの3人を起こして迎撃に向かわせろ。兵士達は動かすな。メキジェウスは『グングニール』の起動準備を任す。目標地点は…わかるな?」

「…わかった。お前がそういうのなら…私は悪魔にでもなろう。目標地点は…古都ブルンネンシュティグ!」



 破滅へのカウントダウンは、今始まった。


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